バルブにはどんな種類があるの?

バルブにはいろいろな大きさ、材料、構造、機能があり、また、いろいろな用途や設備で使われているので、分類の仕方もたくさんあります。たとえば、「鋳鉄(ちゅうてつ)弁」「青銅弁」など材料別に呼ぶこともあれば、「電力弁」「船用弁」など用途別に呼ぶこともあります。
材料の数だけ、用途の数だけ呼び名が増えるので切りがありませんが、構造については、基本的な形として大きく6つの種類にまとめられます。ここでは、基本的なバルブの特徴についてご説明します。

玉形弁

ボディが丸みを帯びているので「玉形弁」「グローブ弁」(globeは球体という意味です)と呼ばれています。中を通る液体や気体(これを流体といいます)の流量を調整するに優れているのと同時に、流体の流れをきっちり止める性能も高いため「ストップバルブ」と呼ばれることもあります。

■ 長所

  • 流体の流れる量を調整することに優れている。
  • 流体をしっかりと止める性能が高い。

■ 短所

  • 急な開け閉めができない(ハンドルを何回も回さないといけないので)。
  • 流体が通り抜ける道(流路)がまっすぐではなく、流れの勢いが弱まってしまう(これを圧力損失といいます)ので、流体を排出したい時には不向き。

■ たとえばこんな時・こんな場所に使う

流体をしっかり止めたいところでよく使われています。但し、玉形弁に限らず、バルブは配管のトラブル発生時やメンテナンス時以外は「常時開」の状態で使用されることがほとんどなので、圧力損失が大きいと困る場所では、仕切弁・ボール弁・バタフライ弁が使われます。
流量調整を目的とする場合は、弁体が細いタイプの玉形弁(ニードル弁といいます。needleは「針」の意味です)がよく使われます。
ちなみに水道の蛇口(給水栓)も多くは玉形弁の構造をもっているので、私たちはハンドルをひねったり、レバーを上げ下げしたりすることで、自由に量を調整できます。
【ご注意】ここに記載しているのは、たくさんある使用例のうちのごく一部です(以下同様)。

知っておきたい用語①

< 配管 >

工場の中などでは長い管や短い管が張り巡らされていますが、これを配管といいます。まっすぐな管と管を、45度や90度の角度で曲がっている管=継手(つぎて)でつなげば、上下左右に配管を伸ばしていくことができます。バルブはおもに管と管の間に設置されて、管の中を通る流体を止めたり量を調節したりする役割を担当します。

< 流体 >

配管の中を流れる液体や気体のことです。固体はそのままの形では配管内に流すことはできませんが、細かい粉や粒であれば、水や空気で送ることができます。また、氷もシャーベット状にすれば流すことができます。
薬品や毒性の強い流体、高温や極低温の流体、配管内の圧力がすごく高い場合は、バルブの材料や強度、管との接続方法がとても重要になります。バルブが腐食したり壊れたりして、流体が漏れ出る(大事故につながります)ことのないよう、メーカーはいろいろな技術的工夫をこらしてバルブを製造しています。

< 圧力損失 >

簡単にいえば、流体の流れの勢いが弱くなることです。流体は、流路がまっすぐであっても少しずつ流れの勢いを失いますが、バルブや管継手を通るときに流れの形や方向が変わると、さらに勢いが弱くなります。配管を設計するときには、圧力損失のことも頭に入れながら、どのバルブを使うかを考えます。

仕切弁

「ゲート弁」とも呼ばれています。流路がまっすぐなので圧力損失も小さく、完全に開けた状態で流体を勢いよく流すか、あるいは、完全に閉めきって流体をきっちり止めるかの目的で使用されます。中間開度(弁体が半分だけ流路に出ている状態)で流量を調節することはしません(チャタリングというトラブルを招きます)。

■ 長所

  • 流体をガッチリ止める性能がとても高い。

■ 短所

  • 急な開け閉めができない(ハンドルを何回も回さないといけない)。頻繁な開け閉めにも不向き。
  • 同じく流路がまっすぐなボール弁と比べると背丈が高くなって場所をとる。中大口径の場合はバタフライ弁に比べて重く、大きくなる。

■ たとえばこんな時・こんな場所に使う

道路の下を走る太い水道管では大口径の仕切弁が使われています。水道管の補修工事のときなどには、補修箇所の手前でしっかりと水を止めなければなりません(近隣の方は工事中断水になることもあります)。工場やプラントで使われる仕切弁も同様に、配管のメンテナンス時に流体を手前で止める役割を果たします。

知っておきたい用語②

< チャタリング >

ひと言でいえば、小さな振動のことです。ゲート弁の場合、中間開度にして、ここに勢いよく流体が流れてくると、通り道をふさがれた流体と弁体がぶつかってしまいます。すると、弁体を支える弁座という部品がカタカタと振動し、金属面に傷をつけるなどして、流体が外に漏れてしまうトラブルを招きます。

ボール弁

孔(あな)の貫通したボールが弁体となっているバルブです。この孔の向きを管路に合わせれば流体が通りぬけて、くるっと向きを変えれば流体を止めることができます。この操作を、レバーを90度動かすだけで行えるのがボール弁最大の利点です。

キッチンのガスの元栓も90度回せば開け閉めできるでしょ?ボール弁が使われているんだよ。

■ 長所

  • 急な開け閉めができる(但し、ウォータハンマには要注意)。
  • ボール内の流路の形を変えて作れば、簡単に三方弁にすることができる。
  • ボディをコンパクトにできる。

■ 短所

  • 流量調整には不向き。基本的に中間開度では使用しません。
  • ボールを支える弁座という部位を樹脂で作ることが多いので、高温(200℃以上)の流体には不向き。

■ たとえばこんな時・こんな場所に使う

流体を止める性能も高いため、その操作性の良さを生かして、ゲート弁の代わりに使われることが増えています。ただし、メンテナンス性はゲート弁の方が優れているので、使用する場所によっては、引き続きゲート弁が使われています(たとえば地中に埋まっている水道管)。

知っておきたい用語③

< 三方弁 >

一方の孔から入ってきた流体を二方向のどちらかに排出できるバルブで、流路切換弁ともいいます。孔を直線で貫通させるのではなく、たとえば、ボールの中心部で流路を上に向ける形で貫通させます。そうしてボールをクルっと回転させると、孔の出口を上に向けることも下に向けることも簡単にできるので、二方向のどちらかに流体を流せるというしくみになっています。

< ウォータハンマ >

勢いよく流れている流体の行き場が急にふさがれてしまうと、配管内で急な圧力変化と衝撃が発生します(ドンっという音がします)。これをウォータハンマといいます。ウォータハンマはバルブだけでなく配管全体を傷つけてしまう恐れがあります。そのため、ボール弁やバタフライ弁では急な開閉をわざとできなくする装置をつけることもあります。日本語では「水撃作用」と言うこともあります。

バタフライ弁

輪っかの中の円板(これが弁体)を90度回転して開け閉めができます。ボール弁と異なり、バタフライ弁は中間開度での流量調整機能にも優れています。また、幅をとらず、省スペースで設置できるのが利点の一つです。

■ 長所

  • 急な開け閉めができる(但し、ウォータハンマには要注意) 。
  • 省スペースで設置できる。
  • 流量調整ができる。

■ 短所

  • 弁体に接する弁座(シート)がゴム素材でつくられている一般的なバタフライ弁は、高温・高圧の流体には不向き。その場合は、シート素材をメタルにするなどして対応します。

■ たとえばこんな時・こんな場所に使う

狭い場所でも設置できる省スペース性を生かして、配管が複雑に入り組んでいる場所や、建物内の機械室などで特に重宝されます。

逆止め弁

JISのバルブ用語には「逆止(ぎゃくど)め弁」と載っていますが、逆止弁(ぎゃくしべん)と呼んだり、英語で「チェックバルブ(check valve)」と呼んだり、それを少し変えて「チャッキ弁」「チャキ弁」と呼ぶ人もいて、様々です。読んで字のとおり、配管に逆流が生じてしまったときに、それを途中で喰いとめる役割を担当するバルブです。

他のバルブは、基本的に逆流も正流(本来の方向への流れ)も止めることができるのに対し、逆止め弁は正流を止める機能はもっていません。
逆流の勢い(背圧といいます)が弱すぎるとしっかりと閉じられないことがあるので、逆止め弁を選ぶときには、どの程度の背圧の強さで機能するかなど、スペックをよく確認する必要があります。また、ゴミが挟まってしっかり閉じられないというトラブルを防ぐための対策も必要になります。

■ たとえばこんな時・こんな場所に使う

ポンプから水を送り出しているときに、何かのトラブルで逆流が発生してしまった場合、そのまま水がポンプまで達してしまうと、ポンプは壊れてしまいます。そうしたときも、配管の途中に逆止め弁が設置されていれば安心です。

ダイヤフラム弁

上に取り上げてきたバルブはいろいろな用途に広く使われるため「汎用弁」とも呼ぶことが出来ますが、ダイヤフラム弁はその構造の特長から、おもに食・医薬品や化学、半導体関連のプラントでの活躍が目立つバルブです。

ダイヤフラム(diaphragm)は「隔壁、隔膜、横隔膜」という意味を持つ単語で、ゴムやフッ素樹脂などやわらかい素材でできた膜と膜をくっつけたり離したりすることで、流路の開け閉めを行います。

他のバルブと異なり、弁棒などの駆動部と流路がダイヤフラムで遮断されているので、駆動部のすき間に流体が入り込んだり、逆に駆動部のグリス(潤滑油)など不純物が流体に混ざったりすることはありません。こうした理由から、デリケートな流体を扱うときにダイヤフラム弁がよく使われます。

■ 長所

  • 洗浄性がとても高い。
  • 駆動部からの漏れ(グランド漏れ)の心配がない。

■ 短所

  • ダイヤフラムの材質によっては、流体の温度など使用条件がかなり限られる。
  • 高圧での使用には不向き。

知っておきたい用語④

< ON-OFF弁 >

これまでの説明で、「完全に開けた状態で流体を流す」とか「完全に閉めきって流体を止める」、「中間開度で流量調整ができる」という表現を使ってきましたが、全開または全閉のどちらかの状態のときだけ使用するバルブを「ON-OFF弁」と呼ぶことがあります。

< 外部漏れ・内部漏れ >

パッキンの劣化や配管との接続の不具合などが原因で、バルブの外側に流体が漏れてしまうのが「外部漏れ」です(ダイヤフラム弁の説明に出てくる「グランド漏れ」も外部漏れです)。一方、「内部漏れ」というのは、バルブをしっかり閉めたはずなのに、流体がチョロチョロとバルブの中を流れてしまっていることをいいます。

< 1次側・2次側 >

流体が入って来る方向(in側)を1次側、流体が流れていく方向(out側)を2次側といいます。上の動画では、左側が1次側、右側が2次側になります。

まとめ

以上、バルブ6種についてごく基本的なところを、できるだけ簡単にご説明してまいりました。ボール弁がないとガスの元栓の開け閉めに時間がかかってしまうこと、ダイヤフラム弁がないと食料品や医薬品の安全性が下がってしまうかもしれないこと、などなど想像しながら、バルブの重要性についてご理解いただければと存じます。
玉型弁と一言でいっても、実はその中には「ニードル弁」や「アングル弁」などいくつか種類があります。仕切弁や他のバルブも同じです。使われる場所や流体によって、バルブの材料や管との最適な接続方法も変わってきます。いろいろと知っていくと、なかなか奥の深い世界です。皆様に、少しでもバルブに興味を持っていただけたら、たいへんうれしく思います。

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